制作過程「いのち」

目次

お写真が決まるまで

この方に元々候補でいただいていたのは、白無垢のお写真でした。

和装もとても綺麗だったのですが、彼女のインスタでこのお写真を見て、「こちらを描くのではいけませんか?」と聞いたのです。

「私もこの写真気に入っています」と快く了承して下さり、描かせていただきました。

ウエディングドレス姿であることよりも、生命を宿している姿よりも、下を向き長い睫毛が影を落とす表情に惹かれた、というのが本音です。

一層目:白黒で描く

現在は綿布を貼ったパネルを支持体としていますが、この時はキャンバスに描いています。

まず一層目を白黒で描きます。

白黒で描いた後、オイルで溶いた固有色を、薄くフィルムをかけるように何層か塗っていきます。

こうして明暗と色を分けて塗っていく画法を「グリザイユ」(仏語:Grisaille)といいます。

最初から固有色で描く「アラ・プリマ」(伊語:alla prima)という画法の方が時間がかからないし、直接的でやりやすい、という絵描きさんもいらっしゃいますが、私は人の肌の複雑な色を表現する際にはグリザイユの方が描きやすいと感じます。

二層目:透明色と白で肌色を作る

透明色の茶色を薄く溶いて、肌全体にグレーズします。

※グレーズ(英:glaze)とは、薄く溶いた絵の具を重ねていく技法(仏語ではグラッシ=glacis)

鼻や顎先など光が当たっている部分に白を塗り、境目を馴染ませます。

血色や陰色も足していきます。

服や髪も塗っていきます。

三層目:背景色を変更、半透明色を重ねる

背景色を緑→赤に変更しました。

更に肌やドレスに半透明色を重ねます。半透明色を重ねる画法をスカンブルといいます(伊:scumble)

この後もう1~2層重ねます。
実際にはこのトーク帽にはお顔の部分に短いネットのヴェールがついています。


そしてドレスにもレースがあるので、乾き次第、ネットとレースを描きます。

目次