この記事では、肖像画オーダーの際に参考にしたい、日常の中にある女性の美しいポーズについて解説します。
同じテーマで書いた前回の記事はこちら。
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髪を編む少女(アルベール・アンカー 1887年)
少女が三つ編みをしている様子が描かれています。
スイスの国民的画家だったアルベール・アンカーは、人々の生活や子どもたちを多く描きました。
長い髪、細い指、そこに落とす視線。
日常を切り取るとは、かくもドラマティックなのです。
紫のドレスの婦人(シニェイ・メルシェ・パール 1874年)
こちらは個人的に思い入れのある絵です(図録で一目惚れ、そして偶然にも画家と誕生日が一緒で、これが見たくて24歳の時にハンガリーへ行きました)。
草原に座る、紫のドレスの女性。
色相環で反対に位置する補色の関係にある紫と緑が鮮やかです。
少し上を向いた女性の瞳は何を映しているのでしょう。
描かれているのは画家の妻。
今では「ハンガリーのモナ・リザ」と評され人気の高い絵ですが、発表当時は色の対比が強すぎて評価されなかったといいます。
この絵は配色の斬新さで語られることが多いですが、こういった女性が座っているだけの絵というのは多いです。
「立っているだけで絵になる」と言いますが、「座っているだけで絵になる」のです。
ゴーギャン夫人の肖像(ポール・ゴーギャン 1880~1881年頃)
ゴーギャンというと色鮮やかな絵の印象がある人が多いかもしれませんが、これは初期の絵です。
モデルは彼の最初の妻。
こういった女性が針仕事をしている姿は、名画によく見られます。
針仕事が伝統的に女性の仕事であったことからジェンダー論的にも語られますが、ポーズとしては前記事の「読書する娘」や、本記事のアルベール・アンカーの「髪を編む少女」のように、“手元に視線を落とす様子”を美しいと思う絵描きが多いのではないでしょうか。
日常に潜む美を絵画に
女性は意識することなく、生活の中で「動作」として、絵になるポーズを取っているものです。
それを切り取ると、息をのむような美しい絵になります。
絵になる風景に肖像画用の写真を撮りに行くのも良いですが、「生活の中での動き」にも注目してみて下さい。